「仙骨座り」は悪じゃない。「円背」患者さんの視界を広げるタオル1枚の工夫

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病院や施設で、こんな光景を見かけませんか?

  • 円背の患者さんが車椅子に座ると、いつも下を向いている。
  • 誰かと話すときは、無理に首を反らせて「上目遣い」で頑張っている。
  • 「姿勢が崩れていますよ」と、良かれと思ってスタッフがお尻を座面の奥に入れ直すが、数分後にはまたズルズルと仙骨座り(滑り座り)に戻っている。

「座り直し」と「仙骨座り」のいたちごっこ。現場ではよくある光景ですが、実はこれ、患者さんにとっては切実な理由があるのです。

なぜ「まっすぐ座る」が苦痛なのか

教科書通りの「深く腰掛ける」姿勢を円背の方に強いると、物理的に視線が下を向いてしまいます。

円背による、この姿勢は以下の問題点が挙げられます。

  1. 認知機能への影響: 常に足元しか見えない状態では視覚刺激が減り、活気が失われます。
  2. コミュニケーションの壁: 顔を上げるたびに首を大きく反らせる必要があり、会話自体が「苦痛な運動」になってしまいます。
  3. 誤嚥(ごえん)のリスク: 首が反った(頸部伸展)状態での食事は、飲み込みを著しく困難にします。

プチ体験: 今、上を向いたままツバを飲み込んでみてください。すごく苦しくないですか? その状態で食事をするのは、とても危険なことなのです。

解決策は「あえて仙骨座りを活用する」こと

ここで提案したいのが、逆転の発想です。「仙骨座りを許容し、その隙間を埋める」というアプローチです。

具体的な2つのステップ

  1. あえて仙骨座りにし、顔を正面に向ける 深く座らせることにこだわらず、患者さんの顔が自然に前を向く位置までお尻を少し前に出します。
  2. 背もたれと腰の「隙間」をタオルで埋める 滑り座りになると、車椅子の背もたれとお尻の間に大きな隙間ができます。ここをタオル等で埋めて支持面を作ります。

「正しさ」よりも「心地よさ」を

専門職の間では、仙骨座りは「悪」とされがちです。しかし、タオル1枚で視界が開け、誰かと笑顔で話せるようになるのなら、それはその方にとっての「正解」ではないでしょうか。

局所的な圧迫も、タオルで接地面積を広げてあげれば分散できます。

仕事が「作業」に変わってしまう前に。

先日、同じ業界の方から寂しい話を聞きました。 「仕事は好きだけど、毎日がただの『作業』になってしまった。やりがいが感じられないから退職します」 そう言って、利用者想いの熱心なスタッフが職場を去ってしまったそうです。

実は、私にも同じような時期がありました。 慢性期病院で、なかなか状態が変わらない患者さんを前に、変化のないリハビリをただ漫然と繰り返す日々。「自分は何のためにここにいるんだろう」と、心がすり減っていました。

そんな私を救ってくれたのは、研修や本で出会った「新しい視点」でした。 学んだことを一つ、現場で試してみる。すると、患者さんの反応が変わり、それを見ている自分の心が動く。その瞬間、「あ、今、自分は作業じゃなくて『仕事』をしているんだ」と、面白さが戻ってきたのです。

「仕事が作業になったから、辞める」 その前に、「仕事を作業にしないために、タオルを1枚入れてみる」

そんな風に思考を切り替えてみると、いつもの景色が少しずつ楽しくなり始めます。 受け身でこなす1時間より、自分で考えて能動的に動く5分の方が、ずっと私たちの心を潤してくれるはずです。

まずはタオル1枚から、始めてみませんか。 「自分で考えて動くこと」の楽しさを、皆さんと分かち合えたら嬉しいです。

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