【心理学・行動学で論破】なぜ高齢者や患者への「タメ口」は絶対ダメなのか?プロとしての境界線

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今日のテーマは、医療・介護現場でたびたび議論になる「患者さんや利用者さんへのタメ口(ため口)」についてです。

病棟や施設で、こんな言葉を耳にすることはありませんか?

  • 「おはよー!」
  • 「オムツ替えるよ〜」
  • 「トイレ行こっか?」

他所の施設を内覧したときも、当然のようにタメ口で会話している光景をよく目にします。ひどい時には「なんねー?私は忙しかったい」なんて強い言葉を高齢者にぶつけている場面に遭遇したこともあります。

ネットで「高齢者 タメ口」と検索すると、驚くことにこんな意見があふれています。

  • 「関係性ができればタメ口もOK」
  • 「心の距離を縮めるために必要」
  • 「家族といるような安心感を与えられる」

……ハッキリ言いますが、これらはすべて思い込みであり、ただの言い訳です。

今回は、なぜタメ口が理論的に「ダメ」なのか、心理学や海外の研究データをもとに徹底的に解説します。

そもそも、なぜ人は現場でタメ口を使ってしまうのか?

タメ口を使う人は、決して言語能力が劣っているわけではありません。背景には「2つの原因」があります。

原因①:潜在的な「差別心」(ステレオタイプ内容モデル)

1つ目は、無意識の「差別」や「見下し」です。 心理学には「ステレオタイプ内容モデル」という集団間態度を説明する理論があります。これは、人が他者を「①人柄(温かさ)」「②能力(有能さ)」の2つの軸で判断するというものです。

右上から時計回りに・・・

  • 温かくて、能力が高い: 誰もが「賞賛」する
  • 冷たくて、能力が低い:嫉妬や妬みを抱く
  • 冷たくて、能力が低い: 誰もが「軽蔑(侮蔑)」する
  • 温かいけど、能力が低い: 人は「哀れみ」を抱く

医療や介護の現場に来られる高齢者の多くは、身体機能や認知機能(能力)が低下しています。そのため、スタッフは悪気(冷徹さ)がなくても、無意識のうちに「哀れみ」や「軽蔑」のフィルターを通して相手を見てしまいがちです。この「自分より下の存在」という固定観念が、タメ口という行動に表れます。

原因②:「反論されない」からOKだと学習してしまう

コンビニの店員さんが、初対面の客にタメ口をきいたら一発でクレームになりますよね。なぜ医療・介護現場でこれがまかり通るかというと、患者さんや利用者さんが「反論してこない(できない)」からです。

反論されない環境で、先輩たちがタメ口を使っているのを見ると、後輩は「あ、ここではタメ口でいいんだ」と学習し、それが病院や施設の「悪しき文化」として定着してしまいます。

「関係性ができているからタメ口でいい」の嘘

「でも、本人がタメ口でいいって言ってるし、関係性ができているから」と言い張る人もいます。

しかし、これはこちらの都合の良い思い込みに過ぎません。他業界で考えてみてください。

  • コンビニの店員さんが「常連になって関係ができたから」と、あなたにタメ口をきいてきたら「なめとんのか」と思いませんか?
  • 施設に出入りする業者さんや物品納入の業者さんが、親しいからといって急にタメ口で喋ってきたら不快ですよね。

実は、職員のタメ口を笑顔で受け入れてくれている利用者さんは、「協調性が高く、自分の気持ちをグッと我慢して周りに合わせてくれている大人な人」なのです。相手の優しさに甘えて、プロとしての接遇を放棄するのは失礼極まりないことです。

海外の研究で実証:「タメ口」は認知症の拒否を増やす

海外では、高齢者に対するタメ口や幼児語、見下した話し方は「Elderspeak(エルダースピーク)」と呼ばれ、明確に批判的な研究対象となっています。


参考:
Ryan et al. (1994)
Patronizing the old: how do younger and older adults respond to baby talk in the nursing home? – PubMed
Williams et al.
Elderspeak Communication: Impact on Dementia Care – PMC
Williams et al. (2017)
Voicing Ageism in Nursing Home Dementia Care – PubMed


数々の研究(Ryan et al., 1994 / Williams et al., 2009, 2017)では、以下のことが分かっています。

  • 高齢者はタメ口を「失礼」「見下されている」「子ども扱いされている」と受け取っている。
  • タメ口を使う職員への評価は下がる。
  • 認知症のある高齢者に対してタメ口(エルダースピーク)を使うと、ケアへの拒否、抵抗、攻撃的な反応が有意に増加する。

つまり、良かれと思って使っている(あるいは無頓着に使っている)タメ口が、現場のケアを余計に難しくしているという本末転倒な結果がデータで出ているのです。

感情のコントロールと「専門職」としてのプライド

潜在的に高齢者への「ステレオタイプ(思い込み)」を抱くのは、人間の心理システム上、防ぎようがない部分もあります。私たちは聖人君子ではありません。

しかし、「心の中でどう思うか」と「どう行動するか」は別問題です。 接遇やケアの専門家である山中慎太郎氏(岡山の特養施設長)は、「タメ口が出る人は、自己コントロール(統制性)が低い人だ」と指摘しています。つまり、感情や言葉をセルフコントロールできない「プロ意識の低い人」だと思われても仕方がないのです。

私たちが目指すべきは、馴れ馴れしい「家族の代わり」ではなく、敬意を持った「専門職(プロフェッショナル)」です。

タメ口文化を断ち切るために、今日からできること

職場のタメ口文化を変えようと、正面突破で「タメ口はやめろ!」と言うと、角が立って孤立してしまうこともあります(実は私もそれで何度も孤立しました……笑)。

だからこそ、私たちはこの一言を共通言語として、粘り強く伝え続けましょう。

「私たちは家族ではなく、専門職です。親しさよりも、まずは『尊重』を大切にしませんか?」

あなたが普段使っている言葉使い、もう一度見直してみませんか?

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