「患者さんのベッド上方移動、教科書通りにやってるのに……正直めちゃくちゃキツい!」 「腰が爆発しそう……このままじゃ看護・介護の仕事を続けられないかも」
毎日現場で頑張るみなさん、本当にお疲れ様です。
体幹を近づけて、膝を曲げて、腰ではなく足を使って……。学校や研修で教わった「教科書通りのコツ」を意識しているのに、体重の重い患者さんや全介助の方を動かすとき、やっぱり腰に激痛が走ることってありませんか?
結論から言います。 手の代わりに「自分の足(太もも)」を使い、「スライディングシート」を併用するだけで、腰への負担は半分以下(体感ではゼロ近く)になります!
今回は、なぜ教科書通りの方法でも腰を痛めてしまうのかという医学的・解剖学的な理由と、現場で本当に使える「足を使った上方移動術」を分かりやすく解説します。
なぜ?教科書通りにやってもベッド上方移動で腰を痛める理由
「自分のやり方が悪いのかな……」と自分を責める必要はありません。まずは、なぜ上方移動で腰をめっためたに痛めてしまうのか、そのメカニズムを知っておきましょう。
1. 腰を「ねじる(回旋)」動作が腰椎を破壊する
腰の骨(腰椎)の間にある「椎間板」は、上からの圧迫(圧縮力)には比較的強い構造をしています。腹筋と背筋を同時に固める「共同収縮」をしていれば、背骨全体で負荷を分散できるからです。
しかし、腰を「ねじる」動きが加わった瞬間に状況は一変します。
腰をねじると、椎間板には平行にズレようとする「剪断力(せんだんりょく)」や「捻転応力」という強い負荷がかかります。椎間板はこの「ズレる力」に非常に弱く、微細な損傷を繰り返すことで椎間板ヘルニアや急性腰椎症(ぎっくり腰)を引き起こすのです。

2. 腰部には骨のガードがない
胸のあたりには「肋骨」というカゴ状の骨があり、骨格自体が体幹をしっかりと固定してくれています。しかし、腰の周囲にあるのは中心を通る「腰椎」という一本の骨柱だけ。
つまり、腰部を安定させるためには筋肉(腹筋・背筋)の力に頼るしかないのです。筋力が疲労して弱くなった状態で腰をねじりながら患者さんを持ち上げれば、腰椎や周囲の靭帯を一瞬で痛めてしまうのは当然と言えます。

だからといって、「腰痛予防のために筋トレしましょう!」なんて精神論を言うつもりはありません(笑)。そんな時間があったら身体を休めたいですよね。
教科書的な指導の正解と「現場の限界」
解剖学的なリスクを踏まえると、研修などで言われる以下のポイントは非常に理にかなっています。
- 腰をねじるのではなく、足と股関節から向きを変えて「体幹の正面」で介助する
- 腕の力や腰のねじりを使わず、前後左右への「足の体重移動」を利用する
……はい、頭では分かっているんです。 でも、「実際の現場で、教科書通りにやってらんないくらい重い患者さん、いっぱいいるよね!?」というのが本音ですよね。
体幹の正面で抱えようとしても、患者さんの体重をすべて手と腕、そして腰で支える構造である限り、限界はすぐにやってきます。
そこで、私たちが実践すべき「現場型の裏ワザ」の登場です。
腰の負担が激減!「大腿部(太もも)」を活用したベッド上方移動術
手で支えるからキツいのです。人間の中で最も太く強い筋肉が集まっている「足(太もも)」を介助に使いましょう。
実践!足を使った上方移動のステップ
- 患者さんの両膝を立てる(曲げる)
- 介助者はベッドに深く寄り添い、自分の太もも前面を患者さんの膝下(大腿後面付近)に入れる
- 介助者の股関節をしっかり固定し、自分の太ももで患者さんの大腿部を押し上げるように、体全体で上方へスライドさせる
ここに「スライディングシート」をあらかじめ背中〜腰の下に挿入しておけば、摩擦が少なくなり、かなりのレベルで負担が軽減します。
この方法の圧倒的なメリット
- 腕力ではなく、全身で筋肉量の大きい「脚の力」を使える
- 動作上、腰をねじることが発生しない(体幹が正面で固定される)
- 持ち上げず「スライド」させるため、腰椎への負担がかなり軽減する
慣れるまでは勇気が要る。でも「やらぬ後悔よりやる後悔」!
この方法を初めて見ると、おそらくこう思うはずです。
「え、脚を入れる位置はどこ?」 「手の位置はどうすればいいの?」 「こんなやり方、先輩や同僚に見られたら『変なやり方しないで』って怒られないかな……」
教科書に載っていないやり方を現場で試すのは、少し勇気がいりますよね。「アイツ変な介助してる」と思われるのが恥ずかしいという気持ちもよく分かります。
そんなとき、私はこの言葉を思い出します。
『やらぬ後悔よりやる後悔』
何も挑戦せずに腰を壊して大好きな仕事を辞めていくくらいなら、新しい方法に挑戦して、自分の身体を守る経験を得る方が何倍も価値があります。
あなたがこの方法をマスターし、楽々と患者さんを移動させている姿を見せれば、周囲のスタッフも「えっ、それどうやってやるの!?」と興味を持つはずです。
恥ずかしいどころか、あなたが職場全体の「腰痛予防の先駆者(パイオニア)」になるのです。
自分の腰を守れるのは、教科書でも先輩でもなく、あなた自身の工夫だけです。次回のシフトから、ぜひスライディングシートと「足」を使った上方移動を試してみてくださいね!

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